ITIL(アイティル)とは、ITサービスについての知識、ノウハウや方法論を、企業、ITベンダーやコンサルタントなどから収集し記述したベストプラクティス書籍集です。
IT運用管理者などITサービスに携わる人が問題解決するためのフレームワーク(サービスガイドライン)として書籍ライブラリにまとめられています。
ITILには、認定資格制度があり問題集や研修機関などで勉強・トレーニングし、試験に合格すれば、初級資格であるITIL Foundation(ファンデーション)や、さらに上級の資格が与えられます。
知識、ノウハウを集約したベストプラクティス集、ITIL(アイティル)の生立ちと経緯とは
ITIL(アイティル)の生立ちは、1989年にイギリス政府のCentral Communications and Telecommunications Agency(CCTA)によってガイドラインとして公表された出版物がオリジナルです。当初は、英国とオランダで限定利用されました。
以降、itSMF (IT Service Management Forum)が1991年に設立され、世界中で本格的にITIL(アイティル)のフレームワーク浸透活動が行われています。日本でも、itSMF Japanが2003年に設立されています。

ITIL(アイティル)進展の経緯は、2004年に「ITIL(アイティル)2」、2007年に「ITIL(アイティル)3」、2019年に「ITIL(アイティル) 4」が発刊され、現在の最新版は2026年にリリースされた「ITIL(アイティル) 5」です。
IT運用をライフサイクルとしてとらえるフレームワーク、ITIL(アイティル)の基本概念とは
ITIL(アイティル)の特徴は、IT運用をライフサイクルのサービスとしてとらえ、アプリケーション開発とシステム保守運用を別々の概念ではなく、開発も運用も統合したフレームワーク体系に位置づける概念としたことです。システム運用を開始して、プロジェクト終了ということではなく、品質を維持し保守運用や改善につながってゆくことをITIL(アイティル)は基本的な考え方にしています。

また、最新のITIL(アイティル)では、AI時代やDXに対応したDPSM(デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント)への拡張および「AIネイティブ」な設計が特徴です。
ITIL(アイティル)の基本概念で注意すべき点は、ITサービス(開発~保守運用サイクル)のデファクトスタンダートであるが、規格やルールではなく、あくまで知識・ノウハウを集約したガイドラインであり、利用者が必要に応じて利用するフレームワークであることです。
いずれにしても、IT担当者(事業者組織)と顧客(ビジネスライン組織などITユーザ)の両者(組織)がライフサイクルの中でのコミュニケーションを深めIT運用や統制を円滑に行うための基盤として期待されます。
サービスサポートとデリバリを中心としたITIL(アイティル)Version 2とは
ITIL(アイティル) V2のフレームワークでは、
- サービスサポート
- サービスデリバリを中心として
- サービスマネジメント導入計画立案
- ビジネス観点
- アプリケーション管理
- ICTインフラストラクチャー管理
- セキュリティ管理
の7書籍で構成されています。
| No. | 書籍名 | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | サービスサポート (service support) | 通称「青本」と呼ばれ、IT利用者が適切に利用できるようサポートするためのマネジメントについて説明している。 |
| 2 | サービスデリバリ (service delivery) | 通称「赤本」と呼ばれ、ITをビジネスで利用している利用者のサービス要求に関するマネジメントについて説明している。 |
| 3 | サービスマネジメント導入計画立案 (planning to implement service management) | 通称「緑本」と呼ばれ、目標設定から導入後の初期診断と継続的な改善を組み込むための方法論を解説している。 |
| 4 | ビジネスの観点 (e-business perspective) | ビジネス環境における課題、事業継続性管理、パートナーシップ、アウトソーシング、変化への柔軟な対応などについて書かれている。 |
| 5 | アプリケーション管理 (application management) | アプリケーションの実装から廃棄までのライフサイクルに関連する課題について書かれている。 |
| 6 | ICTインフラストラクチャー管理 (I.C.T. infrastructure management) | 情報通信インフラの管理について技術的側面から説明している。 |
| 7 | セキュリティ管理 (security management) | セキュリティへのインパクトに関する評価やデータの安全性・機密性を確実にするための課題について説明している。 |
ITIL(アイティル) V2のサイクルのなかでも、特に強調される「サービスサポート」では、日々のIT運用管理をPDCAの一連の流れでとらえ、ITサービスを維持向上させるようにします。
- インシデント管理:顧客ユーザーからの問い合わせ障害連絡、要求依頼など
- 問題管理:インシデントの原因追求や抑制対応
- 変更管理:問題解決のための要件変更定義や対応
- リリース管理:変更承認の下で、変更作業の実施と本番リリース対応
- 構成管理:変更対応に対するHW,SW,ドキュメントなどシステム構成要素の管理
ITIL(アイティル) V2の「サービスデリバリ」では、中長期の運用管理計画の策定をする視点で記述されています。サービスレベル管理、可用性管理、キャパシティ管理、IT財務管理、ITサービス継続性管理が説明されています。

5つのサービスライフサイクルにまとめたITIL(アイティル)Version 3とは
ITIL(アイティル) V3のフレームワークでは、サービスライフサイクルを基本とする次の5つの書籍とオフィシャルイントロダクションで構成されています。
- サービスストラテジ
- サービスデザイン
- サービストランジション
- サービスオペレーション
- 継続的サービス改善
です。
| No, | 書籍名 | 概要 |
|---|---|---|
| 1 | サービスストラテジ (service strategy) | 事業目標に準じたITの役割と要件について解説している。ITIL V2の「ITサービス財務管理」プロセス(サービスデリバリ)を包含している。 |
| 2 | サービスデザイン (service design) | 効果的で費用対効果の高い戦略に即したプロセスの導入について解説している。ITIL V2の「可用性管理」プロセス、「キャパシティ管理」プロセス、「ITサービス継続性管理」プロセス(サービスデリバリ)を包含している。 |
| 3 | サービストランジション (service transition) | アジリティテスト、リスク緩和、ビジネスニーズへの迅速な対応(チェンジ・マネジメント)に関するガイダンス。ITIL V2の「変更管理」プロセス、「リリース管理」プロセス、「構成管理」プロセス(サービスマネジメント)を包含している。 |
| 4 | サービスオペレーション (service operation) | 効果的なプロセスの開発と管理手法について解説している。ITIL V2の「サービスデスク」機能、「インシデント管理」プロセス、「問題管理」プロセスを包含している。 |
| 5 | 継続的サービス改善 (continual service improvement) | ITサービスのコストと品質の測定手法について解説している。ITIL V2の「サービスレベル管理」プロセス(サービスデリバリ)を包含している。 |
「4つの側面」を考慮したITIL(アイティル)Version 4とは
ITIL 4というフレームワーク(全体像)は、「4つの側面」を考慮しながら、「サービスバリューシステム(SVS)」を回して価値を生み出す構造になっています。
| 構成要素 | 概要 | 主な役割・具体例 |
| サービスバリューシステム (SVS) |
需要や機会(インプット)を価値(アウトプット)に変換する組織全体の仕組み | システム全体の枠組み |
| サービスバリューチェーン (SVC) |
SVSの中核をなす、価値創出のための6つの活動 | 計画、改善、エンゲージ、デザイン/移行、調達/構築、提供/サポート |
| 4つの側面 (4 Dimensions) |
サービス管理で片手落ちを防ぐための4つの必須視点 | ①組織と人材 ②情報と技術 ③パートナーとサプライヤ ④バリューストリームとプロセス |
| 7つの従うべき原則 (Guiding Principles) |
迷ったときの意思決定や行動の指針となる共通哲学 | 「価値にフォーカスする」「シンプルに保つ」「フィードバックを得て反復して進化する」など |
| 34の管理プラクティス (Practices) |
実務に落とし込むための具体的活動のセット | インシデント管理、サービスデスク、変更有効化など |
企業の問題・課題を解決するためのITIL(アイティル)とは
企業のITサービス運用では、以下のような問題・課題が提起されています。
日々に流されるままのIT保守運用でコストが消費され、本来のITシステム改善や品質向上、効率化ができていない。問題やトラブルがあると解消に時間がかかってしまい、ITサービスがすぐに停滞するリスクとなっている。
ITサービス運用に関するノウハウや知識が社内に体系的に蓄積されていないため、品質の高いITサービスが安定的に供給できない問題がある。

ITシステム子会社が、親会社に言われるままにIT保守運用していて、コスト削減だけが求められITサービスの向上ができていない。
IT投資に見合うITサービスが行われているのか良くわからないのが問題である。
このような、問題・課題を解決するために、ITIL(アイティル)のフレームワークを導入し高品質なITサービス運用をすることで、IT部門からのサービス提供を可視化、ビジネスラインの顧客満足度を高めることができるようになります。
ITIL(アイティル)のスキル向上と最新の認定資格試験制度
ITIL(アイティル)の認定資格は、弁護士や公認会計士のような職業としての資格ではありませんが、資格試験をパスすると一定の経験と知識を持つスキル人材として評価されます。これらの資格は、転職などの際にも有効です。

企業は、ITサービスの運用や統制を効果的にやりたいと考えていても、簡単に実現できるようなものではありません、上述の様々な問題・課題を、悶々と抱えたまま時間を過ごしている企業が多くあります。また、ITIL(アイティル)をすでに導入していても、効果的なITサービス(サポートやデリバリ)を実現できているとは限りません。
ITILスキル人材は、このような会社にたいして、ITコンサルタントとして改善提案をしたり、実際に就職してサービスライフサイクルの改善などに力を発揮することができます。
ITIL(アイティル)の認定資格試験制度には、難易度に応じて以下のようなものがあり、People Cert社などが公式試験提供機関となっています。
【 入門資格】
- ITIL ファンデーション (Version 5)
- すべての学習者のスタート地点となる基礎資格です。
- デジタルプロダクト&サービスマネジメントの基本概念、サービスバリューシステム(SVS)、4つの側面、ガバナンスなどを網羅します。
【3つの上位ストリーム(称号)】
ファンデーションの上位には、専門性や役割に応じた3つの学習ストリームがあります。
- ITIL プラクティスマネージャー (PM)
- 個別のITILプラクティスを採用し、実務へ応用するスキルを証明します。
- 関連モジュールおよび「ITIL トランスフォーメーション」の取得などが要件となります。
- ITIL マネージングプロフェッショナル (MP)
- プロダクト提供、サービス管理、エクスペリエンス管理、組織変革などの高度な能力を育成します。
- 取得には主に ファンデーション、トランスフォーメーション、プロダクト、サービス、エクスペリエンス などの指定モジュール(計5つ)の取得が必要です。
- ITIL ストラテジックリーダー (SL)
- 現代企業におけるデジタル戦略、ガバナンス、投資、リーダーシップの整合に焦点を当てます。
- 取得には ファンデーション、トランスフォーメーション、ストラテジー などの資格取得が必要です。
【最高峰の称号】
- ITIL マスター (Version 5)
- 複雑な環境での最適化を証明する最上位称号であり、基本的に PM、MP、SL の主要称号取得者が対象です。
TIL (Version 5) の資格体系は、AIネイティブ時代やデジタルプロダクト&サービスマネジメント(DPSM)に対応した最新の認定スキームです。まずは、ファンデーションの取得に向けて、ITIL4との違いを理解し、模擬試験や公式シラバスの出題形式に合わせて学習を進めるのが最も効率的です。
また、ITIL (Version 5) の認定資格には合格時点から3年間の有効期限(更新制度)があるので、PeopleCert社の規定に基づき、更新していく必要があります。














