GHG算定の担当者が押さえる役割分担とデータ収集の進め方

GHG算定は、環境部門やサステナビリティ担当だけで完結する業務ではありません。燃料や電気の使用量、購買金額、物流実績、出張記録、廃棄物量などの情報は、総務、経理、購買、人事、施設管理、事業部門、子会社などに分散しているためです。

特にScope3まで対象を広げる場合は、社内の複数部署に加え、子会社や取引先との連携も必要になります。算定を単発の集計作業に終わらせず、削減施策や情報開示に活用するためには、役割分担とデータ収集の仕組みをあらかじめ整えることが重要です。

GHG算定で役割分担が重要になる理由

算定範囲の広がりにより複数部署の協力が必要になるため

GHG排出量は、Scope1・Scope2・Scope3に分けて把握します。Scope1・Scope2は主に自社で使う燃料や電気などが対象ですが、それでも拠点ごとの請求書、燃料購入記録、車両の給油実績などを集めなければなりません。

さらにScope3では、購入した製品・サービス、資本財、物流、廃棄物、出張、通勤、販売した製品の使用や廃棄など、サプライチェーン全体の活動を扱います。購買部門だけでなく、経理、物流、営業、製造、研究開発、人事などが保有する情報が必要になるため、担当者個人の努力だけで進めることは難しくなります。

算定対象を明確にし、データごとの提出部署と責任者を決めておくことで、依頼漏れや重複計上を防ぎやすくなります。

データの正確性と説明可能性を確保するため

GHG排出量は、基本的に活動量に排出係数を掛けて算定します。活動量とは、電気使用量、燃料使用量、輸送量、廃棄物量、購買量など、排出につながる活動の規模を示すデータです。

算定結果の信頼性は、計算式だけでなく、活動量データの根拠によって左右されます。たとえば、電気使用量であれば請求書や検針データ、燃料使用量であれば購入伝票や給油記録、廃棄物量であればマニフェストや処理報告書が根拠になります。

データを保有する部署が内容を確認し、算定事務局が集計・検証する二段階の体制をつくることで、転記ミスや対象範囲の誤りを減らせます。後から社内確認や第三者検証、開示対応が必要になった場合にも、根拠資料をたどれる状態にしておくことが重要です。

算定結果を削減施策や情報開示につなげるため

GHG算定の目的は、数値を作ること自体ではありません。排出量が多い工程や活動を特定し、省エネルギー、燃料転換、再生可能エネルギーの調達、物流改善、調達先との協働などの削減施策につなげることが重要です。

部署別・拠点別・カテゴリ別に排出量を整理できれば、各部門が自らの業務と排出量の関係を理解しやすくなります。たとえば、施設管理部門は電力使用量、人事部門は出張や通勤、購買部門は購入品や物流に関する改善を検討できます。

また、情報開示では、排出量だけでなく、算定範囲、算定方法、増減理由、削減施策、管理体制を説明することが求められる場合があります。経営層や関連部署が算定結果を共有し、活用する仕組みが必要です。

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GHG算定の基本と担当部署が扱うデータ

Scope1・Scope2・Scope3の違い

GHGプロトコルでは、企業活動に関わる排出量をScope1・Scope2・Scope3に分類します。Scope1からScope3を合計したものは、一般にサプライチェーン排出量と呼ばれます。

  • Scope1は、自社が所有または管理する設備・車両などからの直接排出です。工場や事業所での燃料燃焼、自社車両の燃料使用、製造工程での排出、冷媒漏えいなどが該当します。
  • Scope2は、購入した電気、熱、蒸気、冷水などの使用に伴う間接排出です。電力会社などがエネルギーを供給する過程で排出したGHGを、利用者側で把握します。
  • Scope3は、Scope1・Scope2以外の間接排出です。原材料や製品の調達、輸送、廃棄物処理、出張、通勤、販売した製品の使用・廃棄などが含まれます。

Scope3は15のカテゴリに分かれており、カテゴリ1からカテゴリ8が主に上流、カテゴリ9からカテゴリ15が主に下流の活動です。すべてのカテゴリを最初から高い精度で算定しようとするのではなく、自社の事業に関係が深く、排出量が大きいカテゴリから優先的に取り組む方法が現実的です。

排出量算定に必要な活動量と排出係数

GHG排出量の基本式は、次の考え方です。

  • GHG排出量=活動量×排出係数

活動量には、電気使用量、ガス使用量、燃料使用量、輸送距離、輸送重量、廃棄物量、購入数量、購買金額などがあります。可能な限り、請求書、検針票、購買記録、輸送実績などに基づく実データを使うことが望まれます。

排出係数は、活動量1単位あたりのGHG排出量を示す数値です。たとえば、電気1kWhあたり、ガソリン1Lあたり、貨物輸送1トンキロあたり、廃棄物1tあたりの排出量などが該当します。

国内での算定では、環境省が公表する算定方法・排出係数一覧や、電気事業者別の排出係数などを活用できます。Scope3では、環境省のサプライチェーン排出量算定に関するガイドラインや、用途に応じたデータベースを参照します。使用した係数の名称、対象年度、出典、適用理由を記録しておくことが重要です。

部署ごとに集める主なデータの例

GHG算定では、部門が日常業務で保有している情報を活用します。最初にデータの所在を洗い出し、提出元を明確にすることが効率化につながります。

  • 総務・施設管理部門は、電気、都市ガス、LPG、熱、蒸気、水道、建物設備、冷媒、廃棄物などの情報を扱います。
  • 経理部門は、請求書、支払データ、勘定科目別の購買実績、固定資産、出張旅費、リース料などの情報を扱います。
  • 購買部門は、購入した原材料、部品、包装材、消耗品、外注サービス、仕入先情報、購買数量などの情報を扱います。
  • 人事部門は、従業員数、勤務形態、通勤手段、出張制度、通勤実態調査などの情報を扱います。
  • 物流部門は、輸送重量、距離、輸送手段、配送回数、物流委託先、輸送実績などの情報を扱います。
  • 事業部門は、生産量、燃料使用実績、設備稼働、原材料使用量、製品販売量、廃棄物発生量などの情報を扱います。
  • 営業・商品企画・研究開発部門は、販売製品の仕様、使用時のエネルギー消費、想定使用年数、廃棄方法などの情報を扱います。

算定対象となる組織・拠点・期間の決め方

データ収集を始める前に、何を算定対象にするかを定めます。対象範囲が曖昧なまま依頼すると、拠点によって集計方法が異なり、比較や合算が難しくなります。

組織の範囲では、本社単体、国内グループ、連結子会社を含むグループ全体など、目的に応じて対象を決めます。海外子会社や関連会社を含める場合は、組織境界の考え方を統一し、対象会社一覧を管理します。

拠点の範囲では、本社、営業所、工場、倉庫、店舗、研究所、建設現場、賃借オフィスなどを一覧化します。閉鎖・新設・移転した拠点も記録し、前年度との差異を説明できるようにします。

期間は原則として年度単位で設定しますが、月次や四半期で確認する場合は、会計年度と集計期間をそろえます。対象年度、締め日、データの確定日を明記することが必要です。

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GHG算定を進めるための役割分担

算定責任者が担う方針決定と全体管理

算定責任者は、GHG算定の目的、対象範囲、優先順位、社内ルールを決める役割です。サステナビリティ推進部門、経営企画部門、環境部門などの責任者が担うことが多いですが、企業規模や組織体制に応じて決めます。

算定責任者は、単に集計作業を確認するだけでなく、どの基準やガイドラインを参照するか、どのScope・カテゴリまで算定するか、どの程度の精度を目指すかを判断します。社内で判断が分かれる項目については、基準を定め、例外対応を承認する役割も必要です。

また、算定業務を各部署に依頼する際には、経営層の後押しが欠かせません。責任者の名称、権限、承認範囲を明確にしておくと、部門横断の調整を進めやすくなります。

算定事務局が担う依頼・集計・進行管理

算定事務局は、実務を取りまとめる中心組織です。環境部門、サステナビリティ推進部門、経営企画部門などが担うことが一般的です。

事務局は、対象部署への依頼、データ様式の配布、提出状況の管理、質問対応、データ集計、計算、差異分析、報告資料作成を行います。担当者が変更しても同じ品質で運用できるよう、手順書やチェックリストを整備することが重要です。

事務局がすべてのデータを作成するのではなく、データ保有部署が内容の正確性に責任を持ち、事務局が全体の整合性を確認する体制が望まれます。

総務・経理・購買・人事・施設管理部門の役割

各部門には、保有データの提出だけでなく、対象範囲や数値の意味を確認する役割があります。

  • 総務部門は、オフィスや社用車、出張、賃借物件、廃棄物などに関する情報を整理します。
  • 経理部門は、請求書や会計データをもとに、購買金額、固定資産、旅費、燃料費、外注費などのデータを提供します。
  • 購買部門は、購入品目の分類、購入量、仕入先、調達条件などを整理し、カテゴリ1やカテゴリ2の算定を支援します。
  • 人事部門は、従業員数、通勤方法、出張制度、勤務日数などを整理し、通勤や出張に関するデータの収集を支援します。
  • 施設管理部門は、電気・ガス・熱の使用量、設備台帳、冷媒管理記録、建物別のエネルギー情報を管理します。

依頼先には、データを出すだけでなく、前年から増減した理由や、拠点・契約の変更有無も確認してもらうと、後の差異分析が円滑になります。

事業部門・拠点・子会社に依頼する内容

事業部門、拠点、子会社は、現場の実態を最も把握しているため、活動量の正確性を支える重要な役割を担います。依頼内容は、単に「排出量を提出してください」とするのではなく、何のデータを、どの単位で、どの期間分、どの根拠資料とともに提出するかを具体的に示します。

たとえば、拠点には電気使用量、燃料使用量、車両燃料、冷媒補充量、廃棄物量などを依頼します。製造部門には原材料使用量、生産量、設備別の燃料使用量、製造工程で発生する排出の有無を確認します。

子会社には、対象範囲、提出期限、使用単位、換算ルール、証憑の保管方法を統一して伝えることが重要です。海外拠点を含む場合は、言語、通貨、エネルギー単位、現地の電力係数などの差異にも注意が必要です。

経営層・内部確認担当者が担う承認と確認

経営層は、算定結果を経営課題として受け止め、削減方針や投資判断につなげる役割を持ちます。重要な排出増減、算定範囲の変更、開示内容、削減目標などについて承認を行います。

内部確認担当者は、算定ルールに沿っているか、根拠資料が保存されているか、前年度比較に不自然な点がないかを確認します。内部監査部門、経理部門、リスク管理部門などが関与する場合もあります。

特に外部開示や第三者検証を予定する場合は、算定後に確認するのではなく、データ収集や証憑保管の段階から確認観点を共有しておくことが有効です。

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データ収集を円滑に進める事前準備

算定目的と報告期限を関係者で共有する

算定の目的が不明確だと、関係部署は優先度を判断しにくくなります。法令対応、取引先からの依頼、サステナビリティ情報開示、削減目標の設定、社内のエネルギー管理など、目的を明確にします。

目的に応じて、必要な精度、対象範囲、提出期限、確認方法は変わります。たとえば、初年度に全体像を把握することが目的であれば、利用可能な既存データを活用して概算する方法もあります。一方で、開示や検証を想定する場合は、証憑の保存や算定根拠の記録をより厳格に行う必要があります。

依頼開始時には、算定の背景、各部署に依頼する理由、提出期限、担当者の問い合わせ先を説明することで、協力を得やすくなります。

データ一覧と提出依頼の様式を整える

データ収集では、依頼項目の一覧を作成します。データ一覧には、対象Scope・カテゴリ、活動内容、必要なデータ、単位、対象期間、提出部署、提出担当者、根拠資料、提出期限を記載します。

提出様式は、できるだけ統一します。たとえば、電気はkWh、都市ガスはm3、燃料はLまたはkL、廃棄物はkgまたはtなど、基本単位を指定します。単位が異なる場合の換算方法も定めておきます。

入力欄だけを用意するのではなく、入力例、注意事項、根拠資料の添付方法、前年度値との比較欄を設けると、確認の効率が上がります。

データの保管場所と更新担当者を決める

算定に使ったデータ、請求書、計算ファイル、排出係数の出典、確認記録は、一元的に保管します。担当者の個人フォルダやメールに保存すると、異動・退職時に経緯が分からなくなるおそれがあります。

共有フォルダや専用システムなど、関係者が必要な範囲でアクセスできる保管場所を決めます。フォルダは年度、Scope、カテゴリ、拠点、証憑などで整理し、ファイル名のルールも統一します。

データごとに更新担当者と確認担当者を設定し、誰がいつ更新したかを分かるようにします。月次データを扱う場合は、更新日と確定状況を管理することも必要です。

依頼スケジュールと確認期限を設定する

年度末にまとめて依頼すると、関係部署の負担が大きくなり、データの不足や遅延が起こりやすくなります。年間スケジュールを作成し、依頼、提出、一次確認、差し戻し、最終確認、承認の期限を設定します。

Scope3はデータ収集に時間がかかるため、Scope1・Scope2より早めに準備を始めることが重要です。特に子会社や取引先に依頼する場合は、依頼前の説明、質問受付、再提出の期間を考慮します。

提出期限だけでなく、事務局が質問を返す期限、各部署が修正する期限、承認期限も明確にすると、全体の進行を管理しやすくなります。

データ不足時の対応ルールをあらかじめ決める

実務では、すべてのデータがそろうとは限りません。請求書が見つからない、拠点別に使用量を分けられない、取引先から回答が得られないといった状況を想定し、代替方法を決めておきます。

代替方法としては、前年度実績、月平均、支払金額、延床面積、従業員数、生産量などを用いた推計が考えられます。ただし、推計した場合は、推計理由、方法、使用した前提、対象期間を記録する必要があります。

推計値は恒久的な対応ではなく、翌年度以降に実データへ切り替えるための課題として管理します。データ不足の発生状況を一覧化し、改善計画につなげることが重要です。

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Scope別・項目別に見るデータ収集の進め方

Scope1で集める燃料使用量と自社車両のデータ

Scope1では、自社が所有または管理する設備・車両からの直接排出を把握します。まず、ボイラー、炉、非常用発電機、空調設備、工場設備、自社車両など、排出源を洗い出します。

燃料については、都市ガス、LPG、重油、灯油、軽油、ガソリン、石炭などの種類ごとに、使用量を収集します。請求書、購入伝票、給油カードの実績、タンクの受払記録、設備管理記録などが主な根拠です。

社用車は、車両ごとまたは給油カードごとの燃料使用量を集めます。走行距離だけで算定する場合は、燃費や車種区分などの前提を記録します。リース車両や業務委託車両は、所有・管理の実態によりScope1またはScope3に分かれるため、あらかじめ分類ルールを確認することが必要です。

冷媒漏えいがある場合は、設備台帳、冷媒種類、補充量、回収量、保守記録を確認します。冷媒は少量でも温暖化への影響が大きい場合があるため、設備管理部門との連携が重要です。

Scope2で集める電気・ガス・熱の使用量データ

Scope2では、他社から購入した電気、熱、蒸気、冷水などの使用量を集めます。最も基本となるのは、拠点ごとの電気使用量です。請求書、検針票、電力会社の利用明細、エネルギー管理システムなどからkWh単位で把握します。

電力データは、契約者名、供給地点、対象期間、使用量、契約している電力会社、電力メニューを併せて記録します。再生可能エネルギー由来の電力契約や環境価値を利用している場合は、契約内容や証書に関する根拠も保管します。

テナント入居の拠点では、ビル管理会社から請求される電気使用量を確認します。使用量が把握できず、賃料や共益費に含まれている場合は、ビル管理会社への照会や、合理的な推計方法の検討が必要です。

購入した都市ガスを自社設備で燃焼する場合は、一般にScope1として扱います。一方、外部から供給される熱・蒸気・冷水はScope2に該当するため、エネルギーの供給形態を確認して分類します。

Scope3で優先的に取り組む項目を決める

Scope3は15カテゴリに及ぶため、初年度からすべてを同じ精度で算定する必要はありません。まずは、自社の事業内容や既存データをもとに、排出量が大きいと見込まれるカテゴリを特定します。

一般に、製造業では購入した製品・サービス、資本財、上流の輸送・配送、販売した製品の使用が重要になりやすい傾向があります。小売業や卸売業では購入した製品・サービスや物流、サービス業では購入品、出張、通勤、オフィス関連のエネルギーなどが対象になりやすくなります。

優先順位を決める際は、排出規模だけでなく、データの入手可能性、削減への影響力、取引先からの要請、開示の必要性も考慮します。初年度は金額ベースのデータで全体像を把握し、翌年度以降に排出量の大きい項目を数量ベースや取引先の実データへ移行する進め方もあります。

購買データを活用する際の経理・購買部門との連携

Scope3のカテゴリ1である購入した製品・サービスや、カテゴリ2である資本財の算定では、会計データや購買データが重要になります。経理部門と購買部門が別々にデータを管理している場合は、両部門との連携が必要です。

まず、勘定科目や購買品目を確認し、算定対象に含めるものと除外するものを整理します。たとえば、原材料、部品、包装材、消耗品、外注費、設備投資などを分類します。金額データを使う場合は、税抜・税込、通貨、対象年度、返品・値引きの扱いも統一します。

購買データの品目名は、GHG算定に必要な分類と一致しないことがあります。そのため、品目コード、仕入先分類、カテゴリ対応表を整備し、毎年同じルールで分類できるようにします。

可能であれば、購入金額だけでなく、重量、数量、材質、製造地、輸送条件などの情報も収集します。これにより、実態に近い算定や、削減施策の検討につなげやすくなります。

子会社や取引先からデータを集める際の留意点

子会社や取引先への依頼では、データの提出を求める理由、利用目的、必要な項目、提出期限を明確に伝えることが重要です。一方的な依頼では負担感が大きくなるため、簡潔な入力様式、記入例、説明会、質問窓口を用意すると効果的です。

取引先から一次データを収集する場合は、最初から全社に依頼するのではなく、取引額や排出量への影響が大きい主要取引先から始めます。収集対象は、燃料使用量、電力使用量、製品重量、製品別排出量、輸送実績など、目的に合わせて絞り込みます。

提出されたデータについては、対象期間、単位、算定範囲、算定方法、第三者検証の有無などを確認します。数値だけを受け取るのではなく、どの範囲のどの活動を示すデータかを把握することが重要です。

取引先とのデータ収集は、単年度の依頼で終わらせず、調達方針や取引先向けガイドラインに位置付けることで、継続的な仕組みにしやすくなります。

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算定業務で起こりやすい課題とミスの防止策

依頼先や責任者が不明確でデータが集まらない

GHG算定で多い課題は、「誰が出すべきデータなのか分からない」という状態です。複数部署が関係するデータでは、依頼先同士で対応を待ち、提出が遅れることがあります。

この課題を防ぐためには、データ項目ごとに主担当と副担当を決めます。たとえば、電気使用量は施設管理部門を主担当、経理部門を副担当とするなど、役割を明確にします。

依頼一覧には、データ項目、提出部署、責任者、提出期限、根拠資料、確認担当者を記載します。年度途中で担当者が変わっても業務を引き継げるよう、組織単位で責任を持つ仕組みにすることが必要です。

データの単位・対象期間・集計範囲がそろわない

同じ燃料でも、L、kL、kg、m3など、拠点ごとに異なる単位で提出される場合があります。電気の請求期間が月途中から翌月途中までになっていることもあります。こうした違いをそのまま集計すると、結果の比較が難しくなります。

提出様式で使用単位を指定し、必要に応じて換算係数を統一します。対象期間は年度でそろえ、請求期間が年度をまたぐ場合の配分ルールも決めます。

また、全社分と一部拠点分が混在していないか、子会社分が重複していないか、テナント分が含まれているかなど、集計範囲を確認します。提出時に「対象拠点」「対象期間」「単位」「実績値または推計値」を記載してもらうと、確認しやすくなります。

前年度との比較ができず変動理由を説明できない

排出量が増減していても、事業拡大、拠点の増減、生産量の変化、排出係数の変更、算定範囲の変更など、理由はさまざまです。数値だけを比較すると、削減の成果や課題を正しく判断できません。

前年度比較では、排出量だけでなく、活動量の変化、対象範囲の変化、係数変更、推計方法の変更を分けて確認します。たとえば、電気使用量は減ったが係数変更により排出量が増えた場合、その要因を区別して説明します。

拠点別、部門別、カテゴリ別に前年差を確認し、一定以上の増減がある項目は理由を記録します。前年の計算ファイルや使用係数を保管し、再計算できる状態にしておくことも重要です。

根拠資料が残らず確認や開示に対応できない

算定結果の数値だけが残り、請求書、伝票、計算根拠、係数の出典、確認記録が残っていないと、翌年度の更新や外部からの確認に対応しにくくなります。

データごとに、元資料、加工データ、計算ファイル、係数情報、確認記録をひも付けて保管します。ファイル名には、対象年度、拠点、項目、作成日などを付け、検索しやすくします。

根拠資料の保管年数は、社内規程や開示・監査上の必要性に応じて決めます。紙の請求書やメール添付ファイルも、必要に応じて電子化し、保管場所を統一します。

確認手順とチェックリストで精度を高める

GHG算定は、計算式が正しくても、データの抜け漏れや二重計上があると結果が変わります。担当者の経験だけに頼らず、チェックリストを使って確認することが重要です。

  • 算定対象となる組織、拠点、期間が明確になっているか
  • Scope1・Scope2・Scope3の分類が適切か
  • 前年度から追加・削除された拠点や事業が反映されているか
  • 活動量の単位、対象期間、集計範囲が統一されているか
  • 使用した排出係数の出典と対象年度を記録しているか
  • 推計値を使用した項目と推計方法を記録しているか
  • 前年度と比べて大きく変動した項目の理由を確認したか
  • 請求書、伝票、計算ファイルなどの根拠資料を保管しているか
  • データ保有部署による内容確認を受けているか
  • 算定結果について責任者の承認を受けているか

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継続的に運用できるGHG算定体制のつくり方

年次算定から月次・四半期ごとの確認へ移行する

年に一度だけデータを集める運用では、データ不足や異常値に気付くのが遅れます。特に電気、燃料、廃棄物、物流などの主要データは、月次または四半期で確認すると、算定負荷を分散できます。

月次・四半期の確認では、すべてのScope3カテゴリを毎回算定する必要はありません。まずはScope1・Scope2や、排出量の大きい項目から定期確認を始めます。

定期的に活動量を確認することで、急激なエネルギー使用の増加、請求漏れ、設備不具合、運用変更などにも早く気付けます。年次算定は、日常的に蓄積したデータを確定・集計する業務へと変えていくことが理想です。

データ収集と算定の手順を文書化する

継続運用では、担当者が変わっても同じ基準で算定できることが重要です。算定手順書には、目的、対象範囲、組織体制、データ一覧、依頼方法、計算方法、排出係数、確認手順、保管方法、例外対応を記載します。

特に、判断が必要な項目は文書化しておく必要があります。たとえば、リース資産の扱い、テナント電力の扱い、共同利用設備の配分、購買品目の分類、推計方法などです。

手順書は一度作って終わりではなく、制度変更、組織変更、システム変更、算定範囲の拡大に合わせて更新します。改定日と変更内容を記録し、関係者へ共有します。

算定結果を部署別の削減活動に活用する

GHG算定は、各部署の削減活動に結び付けて初めて価値を発揮します。全社合計だけでなく、拠点別、部門別、排出源別、カテゴリ別に結果を整理し、改善の優先順位を検討します。

施設管理部門では、省エネルギー設備の導入、空調・照明の運用改善、再生可能エネルギーの調達などを検討できます。購買部門では、低炭素な原材料やサービスの選定、取引先との協働を進められます。物流部門では、積載率向上、輸送距離の短縮、輸送手段の見直しなどを検討できます。

排出量の多い項目だけでなく、削減可能性、投資効果、実行難易度、取引先との協力可能性を踏まえて施策を選定します。施策ごとに担当部署、目標、期限、評価指標を設定することが重要です。

システムや外部支援を活用する判断基準

拠点数、子会社数、購買品目、取引先数が増えると、表計算ソフトだけでの管理には限界が生じます。ファイルの版管理、データの重複、計算式の誤り、証憑の分散、集計作業の長期化などが起きやすくなります。

システム導入を検討する目安は、複数拠点・複数子会社のデータを定期的に集める場合、Scope3の品目数が多い場合、取引先への依頼を効率化したい場合、算定根拠や履歴管理を強化したい場合などです。

外部支援は、初年度の算定方針づくり、Scope3カテゴリの判定、複雑な排出源の算定、第三者検証の準備、開示資料の作成などで有効です。ただし、外部に任せきりにせず、社内にデータの所在や判断根拠を残すことが継続運用には欠かせません。

制度変更や開示要請に対応できる体制を整える

GHG算定を取り巻く基準、開示要請、取引先からの質問は変化します。新たな要請が来てから対応を始めるのではなく、算定範囲、データ品質、証憑管理、責任分担を段階的に整えることが重要です。

環境省の温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度では、算定方法、排出係数、マニュアル、報告様式などが公開されています。法令に基づく報告が必要な場合は、最新のマニュアルや電子報告システムに関する情報を確認し、自社の算定ルールへ反映します。

また、取引先や投資家などからの質問に対応するため、算定の対象範囲、使用データ、推計方法、係数の出典、前年度からの変更点を説明できる状態にしておく必要があります。役割分担とデータ管理の仕組みを整え、算定結果を削減活動につなげることで、GHG算定を継続的な経営基盤として活用できます。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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