VaRとは?予想最大損失額の意味と投資リスクの見方

VaRは、投資や資産運用でどの程度の損失が起こりうるかを、金額で把握するための指標です。株式、債券、投資信託、先物、FXなどの値動きには不確実性があります。VaRを使うと、設定した確率と期間の範囲で想定される損失の大きさを確認できます。

ただし、VaRは将来の損失を保証するものではありません。特に市場が急変した局面では、計算結果を大きく超える損失が起きる可能性もあります。投資判断では、VaRの意味と限界を理解したうえで活用することが重要です。

VaR(バリュー・アット・リスク)の基本

VaRが示す予想最大損失額の意味

VaRはValue at Riskの略で、日本語では予想最大損失額などと表現されます。一定の保有期間と信頼水準を定め、その条件下で想定される損失額の境界を示すものです。

たとえば、1日・信頼水準99%のVaRが100万円であれば、通常の市場環境を前提として、1日で100万円を超える損失が起こる確率は1%と読むことができます。逆にいえば、99%の確率では損失が100万円以内に収まると推定していることになります。

VaRの読み方と使われる場面

VaRの読み方は「バリュー・アット・リスク」です。金融機関や運用会社では、保有する資産やポートフォリオ全体の市場リスクを金額で管理するために利用されています。

個人投資家にとっても、複数の商品を保有している場合に、値動きの大きさを共通の金額で比較できる点が参考になります。特に、株式と投資信託、為替、先物など、値動きの性質が異なる資産を同時に保有する場合に役立ちます。

リスクと損失額の違い

投資におけるリスクは、単に損をすることだけを意味しません。価格や収益率がどの程度変動するかという不確実性を指します。値上がりも値下がりも大きい商品は、一般にリスクが高いと考えられます。

一方、損失額は実際に発生した、または将来起こりうるマイナスの金額です。VaRは、価格変動の不確実性を、投資家が理解しやすい損失額へ置き換えて示す指標といえます。

VaRが必要とされる背景

投資対象が増え、先物やオプションなどの複雑な金融商品も広がるなかで、リスクを一つの尺度で把握する必要性が高まりました。VaRは、異なる資産のリスクを損失額として示せるため、経営判断や投資額の管理に活用されています。

ポートフォリオ全体でどの程度の損失が想定されるかを把握できれば、特定の資産にリスクが偏っていないか、資金量に対して投資額が大きすぎないかを確認しやすくなります。

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VaRの見方を決める信頼水準と保有期間

信頼水準が表す損失の起こりやすさ

信頼水準は、VaRで示す損失額以内に収まる確率です。95%や99%がよく用いられます。信頼水準を高くするほど、よりまれで大きな損失まで考慮するため、VaRの金額は大きくなる傾向があります。

信頼水準99%は、100回のうちおおむね1回はVaRを超える損失が起こりうるという意味です。99%という数字だけを見ると安全性が高いように感じられますが、超過する1%の損失規模までは示していません。

95%VaRと99%VaRの違い

95%VaRは、5%の確率で損失額を超える可能性を残した指標です。日々のリスク水準を比較する用途では、95%VaRが使われることがあります。

99%VaRは、より大きな損失を想定するため、一般に95%VaRより金額が大きくなります。楽天証券のMarketSpeedでは、観測期間80日、保有期間1日、信頼水準99%としてVaRを算出する仕組みが案内されています。

どちらが正しいというものではなく、目的に合わせて選ぶことが重要です。比較する際は、信頼水準が同じでなければ数値を単純に比べられません。

保有期間がVaRに与える影響

保有期間は、どのくらいの期間、資産を持ち続けると考えるかを示します。1日VaRは日々の変動リスクを確認するために使われ、10日VaRや1か月VaRは、より長い期間のリスクを考える際に用いられます。

一般に、保有期間が長くなるほど想定損失額は大きくなります。短期間の値動きが独立しているなどの前提では、1日VaRを保有日数の平方根倍して概算する方法があります。たとえば10日VaRは、1日VaRのおよそ3.16倍として計算されることがあります。ただし、市場の変動や相関関係が安定していることが前提であり、急変時にはこの方法が適切に働かない場合があります。

数値例で見るVaRの読み方

1,000万円のポートフォリオについて、1日・信頼水準99%のVaRが80万円だったとします。この場合、翌日の損失が80万円を超える確率は1%と推定されます。

この数値は、損失が必ず80万円で止まることを意味しません。99%VaRが80万円でも、残り1%の局面では100万円、300万円、さらに大きな損失が発生する可能性があります。VaRは損失の上限ではなく、設定した確率における損失の境界です。

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VaRの主な計算方法

過去の値動きから求めるヒストリカル法

ヒストリカル法は、過去に実際に起きた価格変動をそのまま利用して、将来の損益を試算する方法です。特定の確率分布を仮定しないため、過去のデータに含まれる大きな値動きや、正規分布では表しにくい極端な変動を反映しやすい特徴があります。

一方で、過去に起きなかった事象は反映できません。また、どの期間のデータを使うか、直近のデータにどの程度重みを置くかによって、結果が変わります。

値動きの傾向を用いる分散共分散法

分散共分散法は、価格変動が一定の分布に従うと仮定し、過去の値動きから標準偏差や資産間の相関関係を求めてVaRを計算する方法です。デルタ法と呼ばれることもあります。

計算が比較的速く、複数資産をまとめて管理しやすい点が利点です。一方で、株価や為替の変動が正規分布に近いという前提を置くため、実際の市場で起こる急激な下落や極端な値動きを過小評価するおそれがあります。

多数の想定を試すモンテカルロ・シミュレーション法

モンテカルロ・シミュレーション法は、乱数を用いて多数の市場変動シナリオを作り、それぞれの損益を計算する方法です。想定した確率分布や資産間の相関関係をもとに、多数の将来パターンを試します。

オプションのように損益が単純な比例関係にならない商品にも対応しやすく、複雑なポートフォリオの分析に向いています。その反面、計算に時間がかかり、採用するモデルや入力する条件によって結果が左右されます。

計算方法ごとの特徴と選び方

VaRの計算方法は、正確さだけでなく、対象資産、計算時間、利用目的を踏まえて選ぶ必要があります。

  • ヒストリカル法は、過去の実際の値動きを重視したい場合に適しています
  • 分散共分散法は、計算の速さや日常的なモニタリングを重視する場合に適しています
  • モンテカルロ・シミュレーション法は、オプションなどを含む複雑なポートフォリオを分析する場合に適しています

実務では、一つの手法だけに依存せず、複数の方法で計算した結果を比較することもあります。

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投資とリスク管理におけるVaRの活用

資産ごとのリスク量を比べる

VaRを使うと、保有額が異なる資産でも、想定損失額という共通の単位で比べられます。たとえば、保有額が大きい低変動の資産と、保有額が小さい高変動の資産では、どちらがポートフォリオ全体の損失に大きく影響するかを確認できます。

ただし、VaRが小さいからといって、その資産が常に安全とは限りません。流動性の低さや発行体の信用不安など、価格変動以外のリスクも確認が必要です。

複数資産を持つ場合のリスクを把握する

複数の資産を保有する場合、各資産のVaRを単純に足し合わせても、ポートフォリオ全体のVaRにはなりません。資産ごとの値動きが同じ方向に動くのか、異なる方向に動くのかによって、全体の損失額は変わるためです。

値動きの連動性が低い資産を組み合わせると、損失が一部で相殺され、全体のリスクが抑えられることがあります。ただし、市場が急変すると、それまで異なる動きをしていた資産が同時に下落することもあります。

損失許容額に応じて投資額を考える

VaRは、投資額が自分の損失許容額に見合っているかを確認する材料になります。たとえば、短期間で許容できる損失が20万円であるにもかかわらず、1日VaRが50万円なら、投資額やレバレッジを見直す余地があります。

VaRは将来損失の保証ではないため、損失許容額いっぱいまで投資するのではなく、余裕を持った資金管理が必要です。

証拠金取引における必要証拠金の考え方

先物やオプションでは、ポジションの値動きによる損失に備えるため、証拠金が必要になります。日本証券クリアリング機構は、2023年11月6日に先物・オプション取引の証拠金計算方式をSPAN方式からVaR方式へ移行しました。

このVaR方式には、過去の市場データからシナリオを作るHS-VaR方式と、あらかじめ定めた価格変動などの条件でシナリオを作るAS-VaR方式があります。HS-VaR方式では、ポートフォリオ単位の損益を計算し、損失の99%をカバーする金額を求めます。

証拠金額は一定ではありません。市場の変動が大きくなれば、必要証拠金が増えることがあります。レバレッジ取引では、証拠金の余力を継続的に確認する必要があります。

リスク管理でVaRを継続的に確認する方法

VaRは一度計算して終わりではありません。保有資産の構成、価格水準、相場の変動率は日々変化するため、定期的に更新する必要があります。

確認する際は、VaRの金額だけでなく、次の点も合わせて確認するとよいでしょう。

  • VaRが増えた理由が、保有額の増加なのか相場変動の拡大なのか
  • 特定の銘柄、通貨、業種にリスクが集中していないか
  • 実際の損失がVaRをどの程度の頻度で超えているか
  • 市場環境の変化により、過去データが現在の状況に合わなくなっていないか

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VaRだけでは分からないリスクと限界

VaRは最大損失額を保証する数値ではない

VaRは予想最大損失額と呼ばれますが、実際に起こりうる損失の絶対的な上限ではありません。あくまで、指定した信頼水準と保有期間の範囲で算定した損失の境界です。

たとえば99%VaRは、残り1%の確率で起きる損失については、その大きさを説明しません。VaRを超えた後に損失がどこまで拡大するかは、VaRだけでは分かりません。

信頼水準を超える大きな損失の可能性

市場には、まれでも大きな損失を生む事象があります。急激な金利変動、為替の大幅な変動、地政学的な緊張、金融機関への不安などが重なると、通常の値動きを大きく超える可能性があります。

こうした損失の大きさを補完的に確認する指標として、期待ショートフォールがあります。これは、VaRを超えた損失が発生した場合に、その平均損失額を見る考え方です。

市場急変時に過去のデータが役立たない場合

ヒストリカル法を含め、多くのVaR計算は過去の値動きを基礎にします。しかし、過去に経験していない市場環境が生じた場合、過去データだけでは将来の損失を十分に見積もれないことがあります。

また、平常時のデータが多い観測期間では、急変時の値動きが平均化され、リスクを小さく見積もる可能性があります。相場が不安定な時期は、通常時のVaRをそのまま信頼しない姿勢が必要です。

計算方法や前提によって結果が変わる点

VaRは、同じポートフォリオでも計算条件によって数値が変わります。主な条件には、信頼水準、保有期間、観測期間、価格データの頻度、資産間の相関、確率分布の仮定などがあります。

分散共分散法では、正規分布を前提にするかどうかが結果に影響します。ヒストリカル法では、過去データをどの期間まで遡るかで結果が変わります。モンテカルロ・シミュレーション法では、採用するモデルとシナリオの設計が重要です。

VaRとあわせて確認したいストレステスト

ストレステストは、通常よりも厳しい市場変動を仮定し、どの程度の損失が起こるかを試算する方法です。たとえば、株価が大幅に下落した場合、金利が急上昇した場合、為替が急変した場合などを想定します。

VaRが統計的な確率にもとづく指標であるのに対し、ストレステストは具体的な悪化シナリオにもとづく分析です。両方を使うことで、平常時のリスクと異常時の影響を分けて把握できます。

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VaRを投資判断に生かすための注意点

VaRを利益予想や売買判断と混同しない

VaRは損失リスクを測るための指標であり、将来の利益を予測するものではありません。VaRが低い資産が高い利益を生むとは限らず、VaRが高い資産が必ずしも避けるべき商品というわけでもありません。

投資判断では、期待収益、投資期間、資産の内容、分散効果、手数料、流動性などを総合的に考える必要があります。

数値だけでなく資産内容と市場環境を確認する

同じVaRでも、どのような理由でリスクが発生しているかによって対応は異なります。特定の銘柄への集中が原因なのか、相場全体の変動率上昇が原因なのか、為替変動の影響なのかを確認することが重要です。

特に、保有資産の値動きが似通っている場合は、複数の商品を持っていても分散投資の効果が限定的になることがあります。

レバレッジ取引では損失拡大の可能性を考慮する

信用取引、先物取引、オプション取引、FXなどでは、預けた資金以上の金額を取引できる場合があります。レバレッジをかけると、利益機会が広がる一方、損失も大きくなります。

VaRが示す損失額が証拠金や口座資産に対してどの程度の割合かを確認し、急変時の追加証拠金や強制決済の可能性も考慮する必要があります。

自分の資金量と損失許容度に合わせて活用する

VaRを活用する目的は、損失を完全になくすことではなく、起こりうる損失を理解し、自分が耐えられる範囲に投資リスクを収めることです。

投資に回す資金は、生活費や緊急時に必要な資金と分けて考えることが基本です。そのうえで、VaRを参考にしながら投資額や保有資産の配分を定期的に見直すと、感覚だけに頼らないリスク管理につながります。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)

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