【銀行デジタル特集】 デジタル化が銀行にもたらすビジネス革命

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最後に銀行の窓口を訪れたのはいつのことだったでしょうか。かつては給料日に多くの人が店舗に並んでいた時代もありました。しかし、AIをはじめテクノロジーを活用したデータ解析技術の進歩により、公共料金はネットで払うことができ、ネットでもあらゆる決済を行うことができるようになりました。

ネットバンキングも普及し、銀行まで足を運ぶ機会が明らかに減っています。銀行では従来からの業務はもはや存在していないと言っても過言ではありません。

新しいテクノロジー、業界への新規参入、および複数世代の顧客により、激変している銀行業界。しかし金融機関にとっては課題だけではなく大きなビジネス機会の両方が作り出されているのです。

業界という枠の中で各社が差別化を行ってきたこれまでとは、競争のロジック自体が変わる中で、銀行も従来にないやり方でビジネスモデルを変化させることが求められています。それに付随し、これまでSIerに丸投げしていた銀行のシステム部門をインハウス化する流れが加速しており、規模の縮小が予想される銀行業界であってもITデジタルに関するポジションだけは積極的に採用を続けるというところも多くございます。

銀行におけるデジタル化の盛り上がり

そもそもデジタル化とは?

「デジタル化」という言葉ですが、人や企業によって全く違う使い方をしていると思われます。

新聞やテレビ、インターネット上のコンテンツなどで日常的に使われ、社内で「うちもデジタルを活用しないと」という議論をしていることも全く珍しくない昨今。しかし、一口に「デジタル化」といっても「企業内のペーパーレス推進」と「デジタルを用いた新規ビジネスを立ち上げ、社会的な変革をもたらすこと」では全く意味が違います。

わかりやすく説明するため、ユーザーエクスペリエンス(UX)の観点でデジタル化を三段階に分けて紹介します。

デジタイゼーション

デジタル化の第一段階は「アナログデータをデジタルデータに変換すること」です。

例えば、音声などのアナログ信号をデジタル信号に変調すること、アナログ時計からデジタル時計への進化、FAXで送っていた注文書をメールで受信するといったことが挙げられます。「扱うデータ自体はデジタル形式に変わっているが、人が行うプロセスは根本的に変わっていない」というのがデジタイゼーションの特徴です。

デジタライゼーション

第二のデジタル化は「ビジネスをデジタルデータに基づいて変革し、新しい価値を生み出すこと」です。スマホアプリが収集した購買データを用いて店舗のマーケティングに利用したり、物販でCDを購入して音楽を聞いていたものをストリーミング(サブスクリプションサービス)の導入をする、などビジネス・モデルを変革しデジタル化によって新たな価値や利益を生み出すことを指します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは「デジタルによる変革」を意味します。ITの進化にともなって新たなサービスやビジネスモデルを展開することでコストを削減し、働き方改革や社会そのものの変革につなげる施策を総称したものを指します。「デジタイゼーション」の先に「デジタライゼーション」があり、さらにその先に「デジタルトランスフォーメーション」という位置づけです。

「デジタライゼーション」の結果として新たなビジネスやサービスの仕組みが創出され、社会的な影響をもたらすまでになることがデジタルトランスフォーメーションだととらえる事ができます。

一般的に、銀行を含めた大手企業のプロセスの多くは成熟しており、自らをプロセス変革つまりDXにシフト出来ないでいる企業も多くあります。そのためオープンイノベーションの一環として、スタートアップのサービス利用を企業内に促し、外圧的にDXを活用している企業も増えてきています。

その他のアプローチとしては、自社組織内で内発的に取り組むアプローチ以外に、スタートアップに投資してサービス利用を促したり、場合によってはM&Aにより企業内部に取り込んだりする戦略も考えられるでしょう。

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なぜ今銀行なのか?

対顧客サービス

背景の一つは、対顧客サービスの向上にあります。例えば、ネットバンキングやモバイル決済を通じた非対面取引へ急速にシフトしている事が挙げられます。

銀行はこれまで、リアル店舗での対面取引を中心にコーポレートバンキングやリテールバンキングを拡大させてきました。しかし、今後は利便性の高いデジタル取引を好むいわゆる「デジタルネイティブ世代」が経済の主役となります。

既に北米では、「リアル店舗におけるカウンター業務」が年20%程度のペースで減少しています。日本の銀行においても、三菱UFJフィナンシャル・グループは、三菱UFJ銀行の店舗数を2023年度までに現行の4割減の300程度にする計画を明らかにしており、この流れは加速するでしょう。

また近年、非金融系企業が金融業務に進出し始めています。最たる例が「GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)」と呼ばれるIT企業です。例えばAmazonは、決済サービス「Amazon pay」やクレジットカード事業を展開、銀行と提携して様々なクレジットカードを提供しています。また、Facebookは仮想通貨「Libra」の構想を打ち出し、国際間の送金・決済サービスに乗り出す意向を示しています。

銀行業界は長年規制に守られてきましたが、近年、世界各国でテクノロジーを活用した金融の高度化、国の競争力強化を目指す方針が打ち出されており、規制緩和の動きが活発になったり、先端テクノロジーが規制を超えてくる可能性もあります。

行内オペレーション改革とコスト削減

もう一つの背景として、行内のコスト削減をデジタル化で推し進めたいことが挙げられます。

もともと銀行業務は正確性が求められる定型業務が多く、決まった条件のもとで自動化を行うAI・RPAとの相性が良いです。そのため他の業界に先駆けて、RPAの活用が進んでいます。

例えば従来、住宅ローンの業務は「紙」と「人の手」を前提にしていました。顧客から紙ベースで申し込みを受けた後、各担当者が審査や貸し出しなどの業務も紙ベースで進めていました。言うまでもなく、この進め方では、時間(業務量)とコスト(人件費、設備費など)がかかります。業務は基本的に、紙や人がプロセスに介在すればするほど非効率になりやすいです。

欧米では業務の電子化・AI化・即時化によって効率化を図る動きが一般化しています。例えば、よく知られる仕組みの一つに、AIスコアレンディング(AIによる審査を活用した貸し出しサービス)があります。AIスコアレンディングではAIが顧客の様々なデータから法則やルールを見つけて貸出の判断に必要な信用度を算出し、ベテラン行員と同じような審査結果を出すことができます。ある欧米銀行が住宅ローン審査にAIを導入したところ、審査の約90%を即時に完了させることができ、審査精度は人が行ったときとほぼ変わらなかったそうです。

デジタルの広がりと銀行の未来

銀行でのデジタル活用例

フロントでの商品販売

この領域では、すでにはデジタル技術は様々な業務に適用され成果を出しています。例えば、投資信託やアセットマネジメントなどのアドバイザリー業務です。従来、担当者の経験や勘に基づいて行われていたが、過去の営業実績や市場動向をAIで分析することで、顧客の趣向・要望に合わせた提案をすることができるようになっています。

また、煩雑なローンの審査を迅速化することで、成約率の向上につなげています。従来の審査手続きは、ローンセンターなどに集中させて効率化しても、人手を解するため1週間〜1ヶ月かかっていました。しかし、ペーパーレス化とAI審査の組み合わせによって、営業担当がお客様と対面しているその場で審査結果を伝える事ができるようになり、離脱率を低下につながっています。

また、広告やキャンペーンなど商品販売プロモーションの場面でもAIを取り入れることで、最適な施策が行えるようにもなっています。

バックオフィスの事務作業

バックオフィスの事務作業もデジタル化と非常に相性が良いです。これまでもシステム化・ペーパーレス化の必要性は盛んに叫ばれていましたが、AIとデジタル化を組み合わせることで自動化可能な業務は一層広がりました。例えば、「AIの認識機能によって手書き文字の自動読み取りなどの精度を大きく向上させる」「乱雑な文字の読み取り」「過去購買データからクレジットカードの不正利用を検知する」といったことができます。

実際にVisaは、AIを使った不正利用監視システムの導入で、推定で年間250億ドル(約2兆7100億円)の被害を防ぐことができる解析結果を発表しています。

しかし、問い合わせ対応やクレーム処理のようなカスタマーサポート業務に関しては、人との協業が不可欠です。FAQ等の簡易な問い合わせであれば、AI・チャットボットにより効率化を進めることができるかもしれませんが、複雑な問い合わせはAIによる対応だけでは現状難しいです。

たとえば「問い合わせをした側が、自身の現状をあまり理解できていない場合」では、人が問題の発生箇所を探していく必要があります。

新商品企画

まったく新しい商品を発想するには新しい問いの設定が必要ですが、現在のAI機能ではハードルが高いです。将来的にAI単独での新商品開発が可能となるかどうかは、技術革新の動向を見極める必要があるでしょう。

この領域においては、まだまだ人が重要な役割を果たすことになりますが、AIの得意とする大量のデータからのパターン検出能力を商品企画に活かす試みは一部で始まっています。AIが多数商品キャッチコピーを作成し、その中からより良いものを人間が選択することで、人の発想力をAIで補助することを狙う取り組みなどがこの一例です。

メガバンクのデジタル化事例

昨今、メガバンクなどの大手金融機関が相次いで人員削減計画を発表しています。みずほフィナンシャルグループは2026年までに1万9000人の削減、三菱UFJフィナンシャルグループは2023年までに6000人の削減を公表しました。
大規模な人員削減を実現する柱が、RPAによる業務の自動化です。三菱UFJ銀行はRPAで2万時間、三井住友銀行では40万時間を削減したと発表しています。

三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行では、中期経営計画において、各事業会社が顧客対応で推進すべき戦略や、事業本部での人事戦略など、「11の構造改革の柱」を建て、グループ一丸で変革に向けた取り組みを進めています。

2014年からRPAのパイロットプロジェクトを開始しました。パイロットプロジェクトの対象となったのは、住宅ローンの団体信用保険申告書の点検業務で、このプロジェクトで2500時間の削減に成功しています。コンプライアンス部門でもRPA導入を進めており、細かいデータの目視確認などの処理を自動化を行っています。結果的に従業員の6〜7割の仕事を圧縮し、削減できた時間を他の業務に回すことに成功しました。

みずほ銀行

みずほ銀行は、2019年5月に中小企業向け融資仲介サービス「みずほスマートビジネスローン」が開始されました。これは申込みから契約までをすべてインターネット上で完結させる融資サービスで、メガバンクでは初の取り組みです。
本サービスを利用すると最短2営業日以内に融資を受けれることができ、申し込み手続きも従来から大幅に簡素化されました。取引実績データをAIが独自に解析し、審査を行うことで審査期間の短縮を実現しています。中小企業やベンチャー企業が銀行から融資を受けるハードルが下がった点に大きなメリットがあると言えます。

三井住友銀行

三井住友銀行は2017年1月からRPA活用の準備を始め、大手コンサルコンサルティングファームからITコンサルタントを派遣し、行員に対してRPAの研修を行い導入を進めました。
営業店への導入事例では、顧客向けの運用レポート作成にRPAを活用し、担当者が手作業で行っていた運用レポート作成に、ソフトロボを導入しました。担当者のスケジュールからその日訪問予定のクライアント情報をピックアップし、自動でレポートを作成するようにしたことで、担当者のタスクはレポートのチェックだけとなり、作業時間の8割削減に成功しました。結果的に同行は、2019年9月までの2年半で290万時間、1450人分の業務の削減を実現しています。

世界の銀行業界では、モバイル・AI・RPA・ビッグデータアナリティクス・ハイパフォーマンスコンピューティングといった先端のデジタル技術を活用した、銀行オペレーションの高度化が重要事項として取り上げられており、デジタルトランスフォーメーションが推し進められています。一方で多くの日本の金融機関は、業務プロセスの効率化を目指す段階にとどまっており、デジタルトランスフォーメーションの段階にまで達していない(=ビジネスモデルの革新にはつながっていない)のが現状です。

銀行組織の改革

上記のような形でデジタル技術を活用すれば、定型的な事務作業に使う時間を削減し、より付加価値を生み出す業務に時間を使うことができます。AIは大量のデータを読み込んで理解することや、聞かれたことに答えることについては人間よりも遥かに速いです。しかし、人と紙を使うことが前提のオペレーション体制では、良さを存分に発揮することができません。例えば、紙の申込書への対応には、内容の読み取り、判断、記入、ダブルチェック、返送などで数時間、更に休日や夜間を挟むと数日かかることもあります。AIでの処理、デジタルデータの転送が数秒〜数分で済む事を考えると大きな差があることは間違いないでしょう。

オペレーションのデジタル化を進めるためには、まず人と紙を前提にした現状の組織を変えなければなりません。そこで重要なのは、フロントの顧客接点からバックオフィス事務至るまでを、ワンストップで進める必要がある点になります。どうすれば全体的な改革につながるのかを考えないと、結局は部分的な改革で終わってしまうでしょう。そのため、各部門から横断的に人員を集めるだけでなく、強いリーダーシップで全社的な改革を実行できる役員クラスまでを巻き込んで改革を実現する必要があります。
その観点から、邦銀のデジタル化への取り組みを見ると、既存の組織体制を維持する前提でテクノロジーによる自動化、デジタル化を進めている段階に過ぎず、動きがまだまだ不足していると言わざるを得ません。「いまデジタル技術を用いると何をすることができるのか、将来的に何ができるようになるか。」「現状の組織をどう変えると全体の最適化につながるのか。」「どのような施策を打てば組織は変化するのか」などを銀行が明確にイメージし実行に移すまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。このような変革を実践していく上で重要なのは、銀行はなんら特別な存在ではなく、他の産業と同じ基準で評価される一企業だという意識を持ち続けることです。銀行関係者が納得し、誇りを持てる存在意義を確立することができれば、銀行は再び輝く事ができるはずです。

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この記事を書いた人

コトラ(広報チーム)