高畑賢一 
お気に入りに追加 近年加速化するグローバル化と人材不足により、企業が積極的に採用している「オフショア開発」の成功のため、需要が高まっているブリッジSEについて解説します。
ブリッジSEとは
近年、コスト削減を目的に、システム開発の一部を海外で行う「オフショア開発」が増えています。
ブリッジSEとは、このようなオフショア開発において、言語や文化の異なるメンバーで構成されたプロジェクトを、円滑に進めていくために、「橋渡し役」となるエンジニアのことです。
ブリッジSEは、海外にいる現地のエンジニアが担う場合と、国内のエンジニアが担う場合があります。
ブリッジSEは、メンバー間のサポートだけではなく、現地のエンジニアをはじめとしたスタッフと様々な業務を進めたり、プロジェクトの管理も行います。
このため、海外のスタッフと業務を行うブリッジSEには、システム開発のスキルに加えて様々なスキルが求められます。
ブリッジSEの特徴
ブリッジSEは、一般的なSEと同様に、システム開発を担いますが、それぞれ次のような特徴があります。
一般的なSE： システム開発の実装面である要件定義や設計業務が中心
ブリッジSE： 実装面よりも、国内のSEと海外（オフショア先）のSEの橋渡し業務が中心
ブリッジSEは国内外のSEの橋渡し業務が中心となるため、システム開発に関する知識や技術に加えて、海外の開発者との業務を円滑に進めるためのコミュニケーションスキルや、プロジェクトを取りまとめて進行していく、マネジメントスキルも求められます。
ブリッジSEの仕事内容
ブリッジSEは、先述のように、オフショア開発プロジェクトのスムーズな進行のための橋渡し役を担いますが、この項目では、その業務内容について詳しく紹介します。
オフショア先へのプロジェクトの説明
日本とオフショア先では言語や文化、仕事の進め方などが異なるため、ブリッジSEは、オフショア先の企業や、現地のエンジニアにプロジェクトの進行について説明する必要があります。
異なる文化を持つメンバーとプロジェクトを進行していくためには、状況をよく把握して、関係部署と調整をしながら、プロジェクトを管理していく必要があります。
また、日本とは同じようにプロジェクトが進まないことも多いため、納期の変更や延長など様々なトラブル発生時の対応を、前もって具体的に決めておく必要があります。
設計書の翻訳や補足
ブリッジSEは、オフショア先のエンジニアが正確に理解できるように、設計書の翻訳や補足も行います。
日本人のエンジニアが作成した設計書は、日本におけるシステム開発の前提知識（商習慣など）が省略されている場合が多いため、補足を加えなければ、オフショア先のエンジニアに開発を依頼することができません。
このため、設計書を翻訳する際には、オフショア先のエンジニアの知識や慣習を把握し、システム開発で使われる専門用語を適切に理解してもらえるように、補足を加えたり、書き換えたりするなどの工夫が求められます。
成果物の品質チェック
オフショア先からの開発成果物の品質チェックもブリッジSEの仕事です。システムのメッセージの言語は適切か、システムは正確に実装されているか、プログラムに問題はないかなど、細かくチェックします。
問題が見つかった場合は、オフショア先のエンジニアへ修正依頼をします。
修正依頼をする際には、相手を尊重した適切なコミュニケーションを取ることが求められます。
オフショア開発の進捗管理・成果物の品質管理
ブリッジSEは、オフショア開発プロジェクトの進捗管理や、開発成果物の品質管理も行います。
オフショア先は海外なので、国内のように頻繁に現地まで足を運ぶことができないケースも多いです。このような状況で、開発成果物の品質を維持するためには、メールや定期的なオンラインミーティングなどを通して、随時、進捗管理や品質管理を行うことが重要です。
また、もし遅れが出た場合には、すぐに報告し、解決策を提示します。
日本とオフショア間のミーティングセッティング・ファシリテーション
日本のエンジニアとオフショア先のエンジニアが仕事を進める際は、文化や言語の違いなどから、誤解を招きやすい状況にあります。
ブリッジSEは、このような状況の中で、日本のエンジニアとオフショア先のエンジニアが、スムーズで正確なコミュニケーションを取ることができるように、ミーティングのセッティングや、ファシリテーションを行います。
クライアントとの折衝
ブリッジSEは、開発中システムのクライアントとの折衝をを求められる場合もあります。
グローバルな規模で使われるシステムを開発するためには、日本とオフショア先だけでなく、様々な国の文化や風習を理解し、システムに反映させる必要があります。
このような場合、ブリッジSEは日本とオフショア先のエンジニアの橋渡しとしての役割に加えて、直接クライアントとの折衝を行うこともあります。
ブリッジSEに求められるスキル
ブリッジSEは、異文化を持つエンジニアと日本のエンジニアの橋渡し役として、円滑にプロジェクトを進めていく事のできる様々なスキルが求められます。
また、ブリッジSEは技術面においても、システムの全体像や仕様を正確かつ迅速に把握し、技術的な側面から問題箇所の指摘や、修正案の提示を行う必要があります。
この項目では、ブリッジSEに必要とされる多様なスキルを紹介します。
コミュニケーションスキル
まず、ブリッジSEには、プロジェクトマネージャーやエンジニア、顧客の橋渡し役となり円滑にプロジェクトを進めていくための、高いコミュニケーション能力が求められます。
特にオフショア先のエンジニアとコミュニケーションを取る際には、異なる言語や文化を尊重したコミュニケーションが必要となります。
また、顧客やプロジェクトマネージャーなどに、プロジェクトの進捗状況や成果について報告する際には、コミュニケーションスキルに加えて、プレゼンテーションスキルも求められます。
マネジメントスキル
ブリッジSEは、オフショア先の仕事に対する文化やペースなども把握して、プロジェクトを予定通りに進めていく必要があります。また、プロジェクトの進捗管理やスケジュール調整を行うだけではなく、不測の事態が発生した際の、対応についても事前に準備しておく必要があります。
また、プロジェクトに関わるメンバーを取りまとめて、プロジェクトを推進していく能力も求められます。
トラブル対応スキル
ブリッジSEは、オフショア開発において、文化の違いなどから起こる、不測のトラブルに対応する必要があります。また、技術的なトラブルに対しても解決策を提案し、エンジニアをサポートする必要があります。このため、ブリッジSEは、様々な問題に臨機応変に対応できるトラブル対応力が求められます。
ブリッジSEに役立つ言語
ブリッジSEに役立つ代表的な言語は、「英語」と「中国語」です。
まず英語に関しては、優秀なIT人材が多く、オフショア先として人気のある、ベトナムやフィリピンで公用語や準公用語として使われており、主に、これらの国のエンジニアと仕事をする際に役立ちます。
ブリッジSEの仕事で求められる英語レベルは、TOEICでは最低500〜600点で、業務上必要となる、専門用語なども身につけておく必要があります。
英語は世界中で使用されており、システムに関する、様々な最新情報をいち早く得るためにも、身につけておいて損はないでしょう。
次に、中国語に関しても、優秀なIT人材の多い中国のエンジニアとの仕事に役立てることができます。中国のエンジニアは日本語を習得している場合も多いものの、ブリッジSEとして仕事に役立てたい場合は、中国語検定で2〜3級を取得しておくと有利となるでしょう。
一方で、企業によっては現地の方で、日本語が堪能な方が在籍していることもあり、必ずしも現時点で語学ができないといけないこともありませんので、企業ごとにお問い合わせ頂くと良いでしょう。
ブリッジSEの将来性
昨今、企業はビジネスのグローバル化に加えて、大幅なコスト削減を迫られており、オフショア開発を積極的に採用しています。
一方で、ブリッジSEは比較的新しい職業のため、人材が足りておらず、需要が高まっています。
今後もさらに加速するグローバル化と、国内のIT人材不足の影響で、オフショア開発はさらに増加していく見通しです。
このような状況の中で、高いIT技術や、語学力、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルなど様々なスキルを持つ、ブリッジSEの市場価値は、ますます高まっていくでしょう。
また、ブリッジSEとして働いていく中で、IT技術や知識、語学力もさらに高めることができるため、自身のキャリアアップに役立つという点でも、非常に将来性の高い職業と言えるでしょう。
まとめ
ブリッジSEは、国内のエンジニアと、海外の異なる文化や言語を持つエンジニアの橋渡し役として、円滑なプロジェクト推進の鍵を握る重要な存在です。その分、多様なスキルが求められ、責任も大きいですが、非常にやりがいも大きい仕事です。
ご自身のSEとしての知識や経験を活かして、国内外を繋ぐグローバルな仕事がしたいと思われた方は、ぜひ「ブリッジSE」をご自身のキャリアとして検討してみてください。