米国発金融危機がまた来るか? シリコンバレー銀行の破綻について

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シリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー銀行が3月第2週の週末に相次いで破綻しました。(その前には仮想通貨特化型のシルバーゲート銀行も破綻しています)
SVBは規模的には最大地銀の横浜銀行クラスなので、気にしなくても良いレベルではありません。ただ、SVBはかなり異質な銀行だったようで、ベンチャー企業のお金を預金として大量に預かっており、一般個人取引は非常に少なかったようです。

要因としては、
■この10年以上続いた世界的な金融緩和のカネ余り環境で、投資も活発になり、ベンチャーキャピタルも投資家から潤沢な資金を集めて、伸びているITベンチャーに盛んに投資をしていた。
■コロナでリモート需要が高まり、IT業界は更に活況。(大量採用)
■コロナ収束で特需が剥げ、業況悪化。→またGAFA始めIT系が大量採用した人員を大量リストラ開始
また、業績も冴えなくなり、IT企業への投資資金も細ってきて、銀行に預けていた余剰資金の引き出しニーズが高まってきた。
■SVBの預金はこの2年程で倍増したらしい。(VCから投資してもらったカネを取り敢えず銀行に預けておいた)
■銀行は、預金を集めて(原料を仕入れて)、融資(商品)をして、その利ザヤが利益になる構造ですが、2021年までの超低金利、量的緩和状態では、融資が伸びず、仕方がないので、10年国債や証券化商品で運用していた。
■2022年のコロナ収束を機に、誰もが予想していなかったインフレが急進。
■FRB(米中央銀行)がインフレ退治の為に、通常なら3年以上くらいかけて行う幅の利上げを半年で一気に行った。
■債券というものは、満期(償還)まで持っていれば、買った時の利回りで元利金が戻ってきます(例えば2021年に10年物を、1%(債券価格100円)で買っていれば、10年後には1%の利息がついて元本(100円)も戻ってくる)が、ここで問題なのは、途中で売却すると大きく損が出ることがある、という点です。
2021年に10年物の市場金利が1%だったとしても、2022年には4%を超えて来ました。そうなると新しい10年の債券は価格100円で買えば4%の利息が貰えるようになります。残存9年になったとはいえ、1%の債券を100円で売れるはずがなく、大きくディスカウントしないと売れません。(この場合はざっくり100円のものを97円で損切る)
預金の払い戻しに対応するために債券を売って、多額の損失が出たことから、信用不安が発生し、一気に破綻となりました。

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ALM(資産・負債総合管理)が重要

ここで重要なのは、預かっているカネと運用する商品の足の長さを、基本的には揃えておかないといけないのに、いつ引き出されるか分からない(しかも企業預金なので一口が大きい)カネを10年物で運用してしまい、途中で無理やり売って損が出るというまともな銀行ではあり得ない状況が発生した、ということです。

生命保険会社は主として長期の死亡保険を扱っていることから、長い資金の運用が必要となるので、超長期債(20年〜40年物)で主に運用しています。

超長期債がなかった時代は大都市の駅前にビルを建てて、その長期の家賃収入で保険金を運用していました(駅前に◯◯生命ビルという名前のビルがあるのにその会社が入っていないのはそのため)。

金利変動リスク管理が重要なのは当たり前ですが、運用・調達の足(長さ)を揃えることも極めて重要なのです。

今回、米政府は預金保険(3400万円までが上限)を取り払って、全額保証を付けました。

これは、SVBのような異常な比率で短期の預金を長期の債券で運用している銀行はないものの、銀行は必ずある程度は債券で運用しており、皆それが含み損になっているので、連鎖反応が起きないようにという対策です。

が、今回の件は金融当局の監督体制の怠慢が招いたとも言えるので、政府が総掛かりで火消しに走るのは当然でしょう。

金融当局は銀行の資金量について常時モニターしているはずなので、1年で預金量が倍になったような異常な動きがあれば、その要因チェックと、何で運用しているかのチェックもするはずです。(日銀はしています。私が銀行の財務部にいた時は、大手都銀ということもあり、日中も何回も資金量のヒヤリングが入っていたほどです)

この政府の大盤振る舞いが功を奏すれば金融危機にはならないはずですが、どこで綻びが出るかは要注意です。

違った要因ですが、余り目立っていませんが、世界的な大手銀行であるクレディスイス(CS)が、近年、リスク管理の杜撰さから大きな損失を繰り返してきており、投資銀行部門は分社化したり、大量のリストラをしています。

この数日で、財務報告書に不備があると当局に指摘され、PwCから適正意見をもらえていないという事象が発生しています。

ネームバリュー、規模から言って、CSが危機に陥ったりすると、大きな金融危機の連鎖が発生するかも知れないので要注意です。

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この記事を書いた人

KOTORA JOURNAL | 米国発金融危機がまた来るか? シリコンバレー銀行の破綻について

柳田秀穂

大阪外国語大学インド・パキスタン(ウルドゥ)語学科 (現・大阪大学外国語学部) 卒業後、株式会社三井住友銀行(当時・株式会社太陽神戸銀行) に入行。マネーディーリング業務、 ALMヘッジオペレーション業務に従事。 途中、さくら投信株式会社に出向し、 運用部ポートフォリオマネージャーとして公社債投信運用業務に従事。その後、法人取引先の事業再編支援業務を経験。

[ 担当業界 ]
不動産金融、不動産ファンド、投信投資顧問、再生エネルギー、バックオフィス(財務会計・コンプライアンス)