第一三共株式会社は、抗体薬物複合体(ADC:Antibody-Drug Conjugate)の技術を軸に、がん領域で事業を伸ばしている国内大手製薬です。この記事では、同社の事業内容と強み、平均年収、中途採用の募集職種と求められる経験を解説します。
乳がんや胃がんなどの治療薬「エンハーツ(ENHERTU®)」はアストラゼネカとの提携のもとで世界で売上を伸ばし、2025年度(2026年3月期)の売上収益は2兆1,230億円になりました。以下、コトラの視点から第一三共の強みと事業戦略、注力ポジション、中途採用で評価されやすい経験を見ていきます。
会社概要
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 第一三共株式会社(Daiichi Sankyo Company, Limited) |
| 設立 | 2005年9月28日(第一製薬と三共の経営統合により設立) |
| 代表者 | 代表取締役社長 兼 CEO 奥澤 宏幸 |
| 本社所在地 | 〒103-8426 東京都中央区日本橋本町三丁目5番1号 |
| 資本金 | 500億円 |
| 従業員数 | 連結:19,765名/単体:6,252名(2025年3月31日現在) |
| 主要拠点 | 本社(東京・日本橋)、研究拠点(品川・葛西、平塚、館林)、製造拠点(平塚、小田原、館林、小名浜) ほか海外拠点(米国・欧州・アジア) |
| 事業内容 | 医薬品等の研究開発、製造、販売、輸出入 |
事業内容と強み
1. 独自のDXd-ADC技術
第一三共の強みとしてまず挙がるのが、自社で開発したADCの創薬基盤であるDXd-ADC技術です。
- 薬効と安全性の両立を狙った設計:自社開発のトポイソメラーゼI阻害剤(DXd)を薬物(ペイロード)とし、血中で安定しやすいリンカーで抗体に結合させています。がん細胞に薬物を届け、正常な細胞への影響を抑える狙いです。
- エンハーツ:アストラゼネカと共同で開発と商業化を進めています。HER2陽性とHER2低発現の乳がん、胃がん、肺がんなど複数のがん種で承認を取得し、適応拡大を続けています。
- 後続のADCパイプライン:ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)はアストラゼネカと、パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd)を含む3品目は米メルク(MSD)と、それぞれ共同開発・商業化の契約を結んでいます。メルクとの契約は2023年10月に発表されました。
2. 日米欧のグローバル体制
臨床開発や薬事、営業の機能を日本と米国、欧州で連携させる体制をとり、国際共同治験や海外での自社販売、提携先との協業を進めています。
3. ADCの製造・供給体制
抗がん剤や抗体原薬の製造には、高活性物質の封じ込めや無菌性保証、プロセス開発の技術が必要です。第一三共は2024〜2025年度の設備投資を2,000億円増やし、その多くをADCの生産体制整備に充てる方針を示しています。国内の各工場に加え、欧米の拠点や社外のCDMOも活用する計画です。
中途採用の主な募集ポジションと求める人物像
ADCの需要拡大とDX推進を受けて、第一三共の中途採用では研究開発からサプライチェーン、IT・データサイエンスまで幅広い専門職の募集が見られます。
1. 研究開発・臨床サイエンス(R&D / Clinical Development)
- 創薬研究(バイオ医薬品):抗体・タンパク質工学、バイオインフォマティクス、SBDD(構造ベース創薬)、ADME研究、がん領域の病態薬理。
- 臨床開発(クリニカルサイエンス/臨床開発マネジメント):グローバル治験のプロトコル策定、臨床試験のスケジュール管理、FDAやEMA、PMDAなど規制当局との折衝。
2. 製薬技術・サプライチェーン・品質保証(CMC / Manufacturing / QA)
- 製造技術移転・CMCプロジェクトマネージャー:原薬と製剤のスケールアップ、治験薬のGMP製造、国内外のCDMOの管理。
- グローバル品質保証(QA / QMS):日米欧の規制要件(cGMP、PIC/S GMP)に沿った品質マネジメントシステムの構築と、査察・監査への対応。ビジネスレベルの英語が求められます。
- グローバル需給管理(SCM):ADC製品の中長期の生産計画と、世界全体での需給調整。
3. DX / データサイエンス・IT
- データ基盤・DX/AI推進:研究や開発、製造の現場でのデータ基盤の構築と、AIを使った創薬プロセスの効率化。
- 基幹システム(ERP)・サプライチェーンIT:SAP S/4HANAなどのグローバル基幹システムの導入と、それに伴う業務プロセスの見直し。
4. ファーマコビジランス(PV / 医薬品安全性情報)
- グローバルPV体制の整備、症例評価プロセスの自動化と各国間の標準化、薬剤疫学データの解析。
年収・働き方と転職市場での評価
- がん領域のパイプラインに関われる点
標準治療を変えうる新薬の臨床開発や上市に携われることは、創薬やバイオ領域の専門職にとって大きな経験になります。 - 年収と働き方
- 年収水準:有価証券報告書によると、2025年3月期の平均年間給与は1,114万円(提出会社、平均年齢46.0歳)です。職種別や役職別の年収レンジは公表されていません。
- 制度:フレックスタイム制度とテレワーク制度があります。新卒採用サイトの掲載値では、2025年度の平均有給休暇取得日数は17.0日、月平均の所定外労働時間は18.0時間でした。年間休日数や手当の詳細は、応募する求人の募集要項で確認してください。
- 異業種からの採用
DX・AI推進、サプライチェーン改革、ERP導入、プラントエンジニアリングの領域では、製薬業界の経験がなくても、ITベンダーやコンサルティングファーム、化学・重工業メーカーでの経験を生かせる募集があります。
まとめ
第一三共は、エンハーツをはじめとするADCを軸に海外での売上を伸ばしており、中途採用もADCの開発と供給を支える職種が中心です。がん領域の臨床開発やCMC、GMP下での品質保証の経験がある人は、その経験をそのまま生かせます。製薬業界の経験がなくても、ERP導入やデータ基盤の構築、サプライチェーン改革に携わってきた人には応募できる募集があります。


