アセットマネジメント業界の仕事内容と必要スキル・向いている人材とは?

広義のアセットマネジメント業界

・運用会社
運用会社のビジネスモデルは、「お客様からお金を預かり、投資をしてその資金を運用し、お客様に還元しつつその一部を運用報酬として受け取る」ことで成立しています。具体的には、ニーズに合わせた運用商品の企画・開発の業務、経済情勢や企業の調査に基づいて投資判断をする業務、報告書の作成の業務などがあります。また、その商品を営業したり、リスクの管理をしたりする業務などもあります。個人や機関投資家に向けて運用商品を提供する「投資信託業務」の他にも、機関投資家に向けて様々な方法で資産運用のソリューションを提供する「投資顧問業務」もあります。

・販売会社
販売会社とは、運用商品を実際に投資家に販売する会社のことです。運用会社は運用商品の“メーカー”と言われることがあるように、実際に売るのは銀行や証券などの販売会社です。

・投資家
投資家とは、その名の通り実際にお金を出して投資をする人のことを指します。大きく分けて「個人投資家」と「機関投資家」の2種類があります。個人投資家とは個人で投資をしている人のことで、投資を行っていたら誰でもすぐに個人投資家になれるということになります。機関投資家とは、法人として投資をしている会社などのことです。多くの場合、個人のお客様からお預かりした大きな金額を投資する、大口投資家になっています。

アセットマネジメント業界の現状

各国の大規模な金融緩和・低金利政策で、大量の低金利の資金が市場に流入し、資産運用業務がフォーカスされ、そのため人材ニーズが拡大しています。
投資信託業務では、2014年1月にNISAがスタートし、投資信託への新規資金導入を促すための、商品開発業務・ホールセラー・販売用資料作成業務を始め多数の新規ポジションが増加しています。
また、投資顧問業務では、GPIFの運用方針の変更により、従来の伝統資産の運用に加えて、クォンツ・商品開発・オルタナティブ投資等の求人も大幅に増加しています。 今後も、機関投資家ビジネスでは、金融スペシャリストの求人増加は続くものと予想されます。

マーケットの好転により、国内系外資系とも大手アセットマネジメントを中心に求人が増加しています。リーマンショック以降、採用をクローズドしていた影響で、様々なポジションで人員が不足しており、特定のポジションに偏りはなく各アセットマネジメントの状況によりまちまちです。
特に、投資信託に比重の高いアセットマネジメント会社では、系列の証券会社や銀行での投資信託の販売が大幅に伸びているため、投信ホールセラー、外部委託ファンドマネジャー、商品開発、販売用資料作成などの求人が中心となっています。
また、投資顧問会社では、運用を拡大している公的年金への対応として年金営業及びクライアントサービスの求人が増加しています。

運用会社の構造

・運用系
フロント業務は大きく「運用系」と「営業系」に分類できます。運用系の業務とは、最終的な投資の意思決定をしてファンドを運用していく業務です。

・営業系
フロント業務の中の「営業系」の業務はさらに「販売会社向け営業」と「機関投資家営業」に分かれます。
1つ目の販売会社向け営業とは、主に販売会社(証券や銀行など)への営業で、自社のファンドを取り扱ってもらうようにしたり、販売会社へのセミナーの企画や勉強会を実施したりします。顧客と近い位置にいるため、様々なニーズに合わせて新しい商品を開発・企画をしたり、運用状況のレポートを作成したりもしています。
2つ目の機関投資家営業とは、年金基金や金融機関への営業で、顧客の運用方針に合わせた資産運用サービスを提供しています。運用報告書を作成して顧客に説明をしたり、ニーズを調査したりしています。既存ファンドの営業に併せて、運用のコンサルティング的な側面もあります。

・ミドル/バック
リスクマネジメントや資金決済の業務などがあります。ファンドの運用パフォーマンスを分析したり、基準価額を算出したり、ガイドラインへの違反がないかのモニタリングをしたり、社内外のリスクを分析したりしています。また、ファンドには毎日資金が流入してきているため、それらの管理も行っています。

運用の種類

・パッシブ運用
パッシブ運用とは、ベンチマークに連動する運用成績を目指す手法です。ベンチマークとは、目標とする基準のことで、通常は様々な「指数」のことを指します。指数(インデックス)には、例えば日本だとTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価、米国だとNYダウやS&P500などが存在します。例えばTOPIXをベンチマークにしたパッシブ運用のファンドの場合、TOPIXの動きと同じようにファンドの基準価格も動くということです。

パッシブ運用でのファンドの組入銘柄はベンチマークの構成銘柄と非常に似ています。パッシブ運用のファンドでは、ファンドマネジャーが独自に戦略を立てて株式等の売買をするということはほとんどなく、機械的に運用できるのでコストを削減することができます。実際に様々な投資信託を見ても、パッシブ運用のファンドの方がアクティブ運用のファンドより信託報酬は低く設定されている傾向があります。コストが低いというのは大きなメリットです。
一方、デメリットとしてはベンチマーク以上の収益が見込めないということがあげられます。良くも悪くも市場と同じように動くので、短期的に大きなリターンを得たい人には向きません。

・アクティブ運用
アクティブ運用とは、ベンチマークを上回る運用成績を目指す手法です。アクティブ運用のファンドでは、ファンドマネジャーやアナリストの分析、調査に基づいて投資先銘柄の売買や入れ替えが活発に行われます。成長が期待できたり、割安だと考えられたりする銘柄の比重を高くすることができるため、市場の平均利回りを上回る運用成績を目指すことができます。

アクティブ運用の最大のメリットは、組み入れ資産を柔軟に変更してベンチマークを上回る運用成績を目指せる点です。目指す方針が異なるだけで、実際にはパッシブ運用のファンドの方が運用成績が良い場合もあります。
アクティブ運用のデメリットはコストが高いことです。マクロ経済環境や市場の動向、個別銘柄の調査など様々な手間がかかっている分、コストに上乗せされています。

・クォンツ運用
クォンツ運用とは、統計などのデータに基づく機械的な投資判断によって運用する手法です。クォンツとは、「Quantitative(数量の、量的な)」から派生した語で、高度な数学的手法を用いて分析をし、データに基づいて運用をしているということです。

また、幅広く市場や銘柄を分析し、分散したポートフォリオを作成していることも特徴的です。
クォンツ運用のメリットは、人の主観を排除できるという点です。モデルに従って運用を行うため、人が誤った判断をするということを防ぐことができます。

アセットクラス

・伝統資産
伝統資産とは、株式(国内・外国)と債券(国内・外国)のことを指します。文字通り、古くから投資対象とされてきた伝統的な資産のことです。(※ここで株式とは上場株式のことを指す)

・オルタナティブ
オルタナティブ資産とは、伝統資産以外の新しい資産の総称のことです。「alternative」とは、「代替の」という意味で、伝統資産と対比して、”代替の“資産ということです。代表例には以下のようなものがあります。

○ヘッジファンド
ヘッジファンドとは、相場の上げ下げに関係なく、絶対的に収益を追求していくファンドのことです。株式のロング・ショート、グローバルマクロ、イベント・ドリブンをはじめとした様々な手法を用いて、相場がどんな状況でも利益を出すことを目指しています。最近ではヘッジファンドに投資する公募投信などもあり、個人投資家がヘッジファンドに間接的に投資することが可能になっています。

○PEファンド
PEファンドとは、未上場株式に投資をし、経営に関わりながら企業価値を向上させて、IPOや売却によって利益を得ることを目指すファンドのことです。PEとは「Private Equity」のことで、未公開株式という意味です。

○インフラファンド
インフラファンドとは、インフラに投資し、そこから得られる収益を投資家に分配するファンドのことです。
「インフラ」とは具体的には発電所や港湾施設、空港や高速道路などのことを指しています。

○不動産ファンド
不動産ファンドとは、不動産に投資し、そこから得られる収益を投資家に分配するファンドのことです。
実際に不動産を購入することと比較して、少額から投資できる、流動性が高いなどのメリットがあります。

アセットマネジメントの仕事内容

アセットマネジメントの仕事は、大きく1)運用部門、2)営業部門、3)ミドル・バック部門の3つに分けることができます。

1) 運用部門
運用部門では、中長期的な運用収益を実現するために、投資意思決定をめぐる幾つかの役割があります。そのため、ファンドマネジャー、あるいはポートフォリオマネジャーを中心に、アナリスト、エコノミエスト、ストラテジスト、トレーダー、クレジット・アナリスト、クォンツ・アナリスト等が各々その役割を担っています。
運用会社によっても異なりますが、株式のアクティブ運用を例に挙げて業務のステップを説明すると、まず「トップダウンアプローチ」と「ボトムアップアプローチ」のスタイルがあります。
エコノミストやストラテジストがマクロ経済分析や社会情勢、投資環境の予測などの分析を行い、それに基づいて投資方針の枠組みを決定して、投資対象まで選別していくのが選別していくのがトップダウンアプローチです。
これに対しボトムアップアプローチは、アナリスト、クレジット・アナリスト、クォンツ・アナリスト等が個別企業の財務分析に基づき企業価値の評価、バリュエーション等を行い、ポートフォリオを構築していきます。
最終的にはポートフォリオマネジャーやファンドマネジャーによって投資判断が決定されますが、それに基づいて実際にマーケットで適正な価格やコストで売買するのはトレーダーの仕事です。

2) 営業部門
資産運用会社の営業部門は、個人から年金基金、金融機関、事業会社、海外の機関投資家まで幅広くサービスを提供しています。その中で大きく「投資信託営業」と「機関投資家営業」に分かれています。
投資信託営業は、主として証券会社や銀行などの金融機関を通じて、個人投資家向けの資産運用サービスを行っています。顧客のニーズに合った商品の開発や企画の提案、マーケット情報や投資信託の月次・週次運用状況レポート、パフォーマンスのディスクロージャーの作成・提供等を行っています。また販売窓口である銀行や証券会社の担当者に対して、セミナーの企画や勉強会の実施を行います。
機関投資家営業では、公的・私的年金や金融機関等の幅広い顧客に対して、その運用目標や年金制度に対応した資産運用サービスを展開します。
投信営業と同様に、顧客への運用報告書を作成し、その説明を行うほか、市場や海外の投資家動向などの情報提供も行います。また、年金コンサルティング会社に対するマーケティング活動の仕事もあります。

3) ミドル・バック部門
ミドル・バック業務はミドルオフィス、バックオフィス業務とも呼ばれ、オペレーション業務の中に位置しています。フロント業務が資産運用の意思決定に係る部署であり、バックオフィス業務が実際の資金決済に係る業務で、それ以外のオペレーション業務がミドルオフィス業務になります。
ミドルオフィスはその業務を通じて、フロントの運用は営業をサポートする重要な役割を果たしています。具体的には、運用パフォーマンスの測定・分析、リスク管理、レポーティング、各種データ管理等になります。
運用会社によってミドルオフィスとバックオフィスの役割が多少違うところもありますが、バックオフィスの具体的な仕事内容としては、約定処理、キャッシュ管理、残高管理、権利保全、ファンド計理、信託銀行とのデータ照合等、こちらも多岐に亘ります。

アセットマネジメント業界に求められる人材・スキル

アセットマネジメント会社への転職ですが、未経験であれば、銀行・証券会社等金融機関の有価証券関連部門での経験や、必要とされる金融知識(証券アナリスト資格等)は必須ですし、外資系を目指すとなると語学力も必要となってきます。
営業部門では過去に様々なクライアントと築きあげてきたリレーションが重視されてきます。
また、システムやコンプライアンスなどの部門においては、金融機関以外(コンサルタント等)での運用会社向け経験も活かせます。 今後は更に経験者でかつ求人案件にマッチしていても、より高度な人材が求められる傾向にあります。

トピックス

・ESG投資
ESGとは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取ったもので、これらの要素を考慮した投資のことをESG投資と言います。ESGを考慮した企業に投資を行うことで、その企業が持続的に成長し、中長期的に安定したリターンを得られると考えられています。また、ESGに配慮した企業の活動を投資家として支援することで、SDGs達成につなげることもでき、ESGに関連するファンドも多数存在するなど近年特に注目されています。

・ロボアドバイザー(ロボアド)
ロボアドとは、AIを活用して投資アドバイスや運用を行うサービスのことです。ロボアドには「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類があります。アドバイス型では、投資家はAIからのアドバイスをもらうだけにとどまります。投資一任型では、資金を預けて運用は全てお任せすることになります。

・ファンドラップ
ファンドラップとは、投資家のニーズに合わせて複数のファンドを組み合わせたポートフォリオを提案し、投資家に代わって資産運用をするサービスです。運用に関する知識があまりない方に向いていて、投資一任契約を結んだ後は自分で運用成績を確認して適切な資産配分を考えたりする必要がなくなります。
投資家に合わせた適切なリスクを取ることができる、分散投資によってリスクを小さくできるなどのメリットがある一方で、通常の公募投信より費用は高い傾向にあります。

主なアセットマネジメント会社

外資系運用会社

  • BNYメロン・インベストメント・マネジメント・ジャパン
  • HSBCアセットマネジメント
  • J.P.モルガン・アセットマネジメント
  • イーストスプリング ・インベストメンツ
  • UBSアセットマネジメント
  • アライアンス・バーンスタイン
  • キャピタル・インターナショナル
  • ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント
  • ドイチェ・アセット・マネジメント
  • パインブリッジ・インベストメンツ
  • ピクテ・ジャパン
  • ピムコジャパンリミテッド
  • フィデリティ投信
  • ブラックロック・ジャパン
  • PGIMジャパン
  • ラッセル・インベストメント
  • フランクリン・テンプルトン・ジャパン

日系運用会社

  • MU投資顧問
  • SBIアセットマネジメント
  • しんきんアセットマネジメント投信
  • シンプレクス・アセット・マネジメント
  • ニッセイ・アセットマネジメント
  • アセットマネジメントOne
  • 三井住友DSアセットマネジメント
  • 三菱UFJ国際投信
  • 新生インベストメント・マネジメント
  • SOMPOアセットマネジメント
  • 東京海上アセットマネジメント
  • 明治安田アセットマネジメント
  • 日興アセットマネジメント
  • 日立投資顧問
  • 野村アセットマネジメント

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この記事を書いた人

関口大輔

大手証券会社で富裕層向け、中小法人向け営業に従事。プレーヤーとして資産運用、ソリューション営業を長期に経験したほか、部長職としてマネジメントを経験し、現職。

[ 担当業界 ]
証券会社、銀行、税理士・監査法人、事業承継、M&A、アドバイザリーファーム